2017-05

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たまにはSS書いてみる

rapからお題をいただいたのでたまには
お題「寝込んでいるところに、彼女がおかゆを作りに」

「ハニーなんて知らないもん!」
 ――いや、ちょっと待ってくれ。
 制止の言葉を声にしようとするが、喉がストライキでも起こしたかのように働いてくれない。
「ハニーのバカ! セクハラさん! もう来ないの!」
 ばちん、と軽快な音が響く。一瞬遅れて頬に痛みが走った。
「お、おい……」
 搾り出すようにして出したかすれ声は――玄関を飛び出た彼女――星井美希には聞こえていただろうか?
 呆然としながら俺は、手を伸ばし。

 ――――――――――――――――――――――――

 目を覚ましたのはインターフォンの音でだった。
 風邪で重くなった体を起こし、玄関に目をやる。来客があった以上は出なければならないのだが、会社を早退するほどの風邪に苛まれた体ではどうにも出る気がしない。
 ぴんぽん。
 やけに軽い音が鳴る。これで二度目。もっとも、俺が気付いてからの換算なのでこれが三度目以降だったとしても知る由はないのだが。
 ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん。
 なかなか出ないことに業を煮やしたのか、続いて間空けずに三連続。出ないのがわかっているのなら、とっととそのドアを開けてほしい。鍵ならかかっていないのだ。
 反応が無かったせいか、数秒の沈黙。
 そして、がちゃりとノブをひねる音がして、ドアが開け放たれた。
「ハニー! 小鳥から聞いたけど風邪、ひいたって本当!?」
 言葉とともに、放たれた弾丸のように飛び込んできたのは茶髪の少女。俺の彼女である星井美希である。
「ああ。でも、薬を処方してもらったし、少しは良くなっ……」
「やっぱり風邪なんだ……ハニー、寝てて。ミキがおかゆ作るから」
 こちらの返事を完全に聞く前に用だけ伝え、そのままいそいそとエプロンを取り出す美希。
 フレッシュグリーンの鮮やかな生地で、胸の辺りには大きなハートがついているそのデザインには見覚えがある。以前、美希が出演した料理番組の収録で使ったやつだ。
「美希、悪いが米は炊いてないぞ」
 くらくらする頭を押さえ、簡潔に事実を伝える。おかゆを作るためには炊いた米が必要であるが、朝から体調が悪かったためにそんな物を作り置きしているはずがない。
 それよりも、下手に台所周辺をうろつかれて、料理本の横に置いてある別事務所のアイドルのグラビアなんかが見つかったらまずい。と言うか、確実に見つかる。
 断言出来るのは、以前も見つかったことがあるからだ。
「じゃあ……ミキがお米を炊くの」
「いいよ。美希、料理は慣れてないだろ?」
「うぅ……」
 出来るだけ言葉を選び、美希を諭すが、目的を果たせないことに不満を感じたのか、明らかに何か言たそうな顔をしている。
 俺と美希の間に、少しの沈黙が訪れ――
「あ、じゃあ」
 その沈黙を破ったのも、やはり美希だった。
「これでおかゆを作るの」
 ニコニコと太陽みたいな笑顔で彼女がバッグから取り出したのは、美希の顔ほどもある大きなおにぎり。全体を覆う海苔から磯の香りが漂ってくる。
「ハニー、台所借りるね」
「……ああ、わかったよ」
 明らかにおかゆ作りに向いていない代物を手に台所へ向かう美希を、今度は素直に送り出す。何かを探そうとしなければ、あのグラビアが見つかることはないのだから。


「はい、あーんして」
「お、おう」
 美希の差し出してきたスプーンには黒い汁が乗っていた。お茶漬けと考えれば食べられる代物なのだが、茶碗の中のおかゆにイチゴジャムが浮いているのを見るとどうしても躊躇ってしまう。
「……ぐっ」
 口の中に甘い香りが広がり、直後に吐き気。体調不良と相まってそのまま吐き出したくなるが、なんとか我慢す
「どう? おいしい?」
 口に出せば本音が漏れそうなので、無言で首を縦に振る。
「そっか、良かったの」
 満面の笑みを浮かべ、茶碗を床に置く美希。
「あ……そういえば」
「ん?」
 ジャム入りという、生まれて一度も口にしたことのない、出来れば今後も口にしたくないおかゆを飲み込み、何かを思い出したという顔の美希に顔を向ける。
「さっきそこで記者の人に会ったの」
「記者?」
「悪徳……だっけ? 765スポーツの」
 唇に人差し指を当て、記憶を掘り返す美希に、俺は思わず舌打ちしそうになった。
 悪徳――スキャンダル記事を書かせれば天下一品。あること無いこと書き連ね、世間にはそれが事実として伝えてしまうようなタチの悪い男。正に名のごとく悪徳記者である。
「美希、ひょっとして今からどこへ行くのかって聞かれなかったか?」
「うん、聞かれたよ。ハニーの家に行くから取材はダメーって言っておいたの」
 胸の動悸を抑えて問う俺に、美希はあっけらかんと答えた。
 ――やられた。
 美希と俺との交際は公表していない。細心の注意を払って密会をしていた甲斐があってか、噂にすらなっていない。
 それが悪徳に知られた。今やSランクアイドルである美希のスキャンダルなど、奴にとっては十分すぎるほどに飯の種だろう。
 まだ交際がバレるだけならいい。だが、それによって美希の人気が落ちたり、最終的に俺と別れるハメにな可能性があるのだ。
「美希」
「ん? ハニー、どうしたの?」
「過ぎたことは仕方ないけどもしも他の記者に同じことを聞かれたら、誰とも付き合ってないって言ってほしい」
 焦る気持ちを抑え、努めて冷静に言う。悪徳の影響力が侮れないと言っても、やつ一人が記事にしただけならまだなんとかなる。
「…………なんで?」
 不服そうな表情で問いかけてくる美希。
「美希はSランクアイドルなんだ。ファンの気持ちを裏切らないためにも、こういうことは隠さないと」
「…………ファンの人は大事だよ。でも、ミキはそれ以上にハニーが大事」
「そう思うなら、余計に……」
 俺がそこまで言いかけて――
「じゃあもう来ない」
「――え?」
 予想しなかった反応に、一瞬反応が遅れた。
 なぜだ? ”なぜこのタイミングで?”
「さよなら、ハニ……プロデューサーさん。ミキが彼女じゃなくなればいいんでしょ?」
「み……」
 声をかける余裕があればどれだけよかったか。静かに立ち上がり、くるりと背を向けた美希は無言で玄関へ向かい、そのまま走り去った。
「――――どこで失敗した?」
 呆然と立ち尽くし、ただ出るのはその言葉。
 状況を整理できぬまま、手を伸ばす。

 その先にあるのは、買ったばかりのゲーム機。

 願うのは、”次”は美希とこうならないようにということだけ。

 そして俺は、リセットボタンを押した。


執筆時間:90分
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JAM99P

Author:JAM99P
ワナビだったり、競馬関係者だったり、邪気眼だったりする人。普段は真面目な動画作ってるつもりで、頻繁に壊れる。
雪歩さんが6歳になったようです信者であり、自称タイガージョー一門。
某ルオーPとは別人のはず。

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